概要
当プロジェクトは、2011 年に発足した、建築の池田靖史研究室と教育の長谷部葉子研究室の合同プロジェクトです。本プロジェクトの活動拠点である口永良部島は、鹿児島県屋久島町の隣に位置する人口約 100 名の離島であり、豊かな自然や人と人とのつながりの強さなど、都会にはない離島ならではの魅力に溢れています。しかし一方で、口永良部島は現在、少子高齢化や人口減少など多くの問題を抱えています。私たちは、そんな口永良部島が、島民の方々の意向に沿った形で子々孫々と続くような取り組みを島民の方々と共に行っていくことを目的として、春夏の長期休暇を中心として実際に島に滞在しながら活動を展開しています。また、現在口永良部島内小中学校・屋久島町役場にて各 1 名の学生が長期滞在を行なっています。
変遷
当プロジェクトは、2011 年に発足し、口永良部島で古民家を拝借するなど、「島に暮らし、島の生活を理解する」ことを通して、島民の方々と、プロジェクトとして、学生個人個人として、関係性を築いてきました。プロジェクト発足当初は「よそ者」として見られていましたが、2013 年度から今夏までの 4 名の口永良部島・屋久島での長期滞在者の存在に加え、2014 年、2015 年と立て続けに起こった噴火を経ても続いてきた関わり合いの中で、徐々に任される役割が増えるなど、島との関わり合い方も変化してきています。今までの関係性を基盤に行政とも連携を取りつつ、島の活性化に向けた仕掛けづくりを島民の方と共に進めています。
理念
私たち学生は、屋久島町口永良部島という一つの社会、そこに暮らす人々の暮らしに関わらせていただいているという責任感と真剣味を持って活動しています。また、活動が「島の方々との協働活動」であることを第一に考え、その先に「地域・行政・大学が互いの役割を持ち寄りながら関わり合う、地域住民主体の地域づくりの実現」を目指しています。これらを通して、人口増加や経済規模の拡大といった従来の地域活性の論理とは異なる、本質的で持続可能な地域づくりに対する新しい価値を創造していこうと考えています。
口永良部島は、鹿児島県にある屋久島の北西約12km に位置する火山島です。屋久島からフェリーで 1 時間 40 分かかり、人口は約 100 名と極めて少なく、平成 29 年 10 月時点で世帯数 62 戸、うち小学生 5 人、中学生 6 人と高齢化率が 30.8%と少子高齢化が進行しています。島全体がひょうたん型をしており、全域が屋久島国立公園に認定され、緑の火山島と呼ばれています。島の基幹産業として輸送業・民宿・漁業、畜産業などがあり、他には役場・郵便局・農協・水道など、「公共」の仕事がほとんどです。豊かな自然だけでなく、島民の方々の人としての温かさ、皆で協働し互いに助け合いながら生活している非常に魅力的な島です。
最近の活動
<地域住民主導の地域活性化モデルの構築>
地域住民が地域のあらゆる問題に対して当事者意識を持って、問題解決に取り組んでいく基盤を作るため、この夏、公民館をお借りして、島の未来について意見を出し合う場「これから研究室」を開室しました。また、地域・大学・行政三者の連携を深めるため、屋久島町役場と鹿児島県庁にて、2 週間ほどのインターンシップを行いました。
<都市 / 離島間の交流型協働>
都市と離島の双方の価値観を吸収する場を設けるため、私たちは交流活動を継続して行なっています。島の閉ざされた学習環境を改善するため、大学生が島の子どもと、島について考える場・勉強をする場として「寺子屋」を開催しました。さらに東京の高校生が屋久島・口永良部島でのホームステイなどを通して、東京では気づきにくい価値観に触れ、様々な視点から物事を考える機会を、「高校生研修」にて提供しています。この活動は、島の子どもにとっても、同世代の子どもと交流し島内外について知る機会となっています。